News and Views 2013 Autumn / Vol. 7: オートモーティブ

48V/12V車両システムのトレンドと新たなテクノロジ導入の見極め

48V電装システムのトレンド

ドイツの自動車OEMメーカーでは48Vシステムの採用が進んでおり、2015年から2016年のモデルでの市場投入が予定されており、特にプレミアムカーから48V採用が始まり、一般車へと普及が進むと言われています。自動車業界において、バッテリやシステムの高圧化の動きは今回が初めてではなく、1990年初期、2000年初期に欧州を中心として活発化したものの、結局、各OEMメーカーとも採用には至りませんでした。

近年、48V採用の動きが進んでいる大きな理由は、自動車1台当りのエネルギー需要が12Vジェネレータに対してすでに3kwを超えてしまっているからです。48VのジェネレータとMOSFETの技術を使うことで、8~10kwのエネルギー量を賄うことができるようになります。これは、数年後に必要とされる需要予測をも大きく上回っています。電流を抑えることでワイヤの小径化やモータの小型化が進み、また送電ロスや熱上昇を抑える効果も期待されています。さらに、自動車が動いていてもアクセルを踏んでいない間はエンジンを止めてしまう惰行運転において、ステアリング、冷却、空調、照明を保持するには48Vの方が有利で、燃料を15%ほど低減できると言われています。

では、高圧化の推進に際して、前回は2度失敗したにもかかわらず、今回は成功している理由は何なのでしょうか。それは、前回は自走車システムのすべてを高圧化対応にしようとしたため、数多くのサプライヤからの賛同が得られなかったのですが、今回は例えば、ステアリング、ターボチャージャ、VDC、空調など、高負荷の電装コンポーネントのみを48Vとし、パワーウィンドウ、ミラー、車載情報機器、クラスタなどは既存の12Vシステムをそのまま使用する電圧混在のネットワークとすることで、サプライヤへの影響を抑えているからです。

図1. 48V/12V電圧混在の車載ネットワーク図1. 48V/12V電圧混在の車載ネットワーク

このため、電圧混在のネットワークの構築には、異なる電位間でDC/DCコンバータによる昇圧、降圧が欠かせません。

新たなテクノロジの評価/導入が難しい理由

自動車産業において、新たなテクノロジを正しく評価し導入することは、決して容易なことではありません。その理由の1つは、新たな導入に伴う課題やリスクをどのように扱うかについても考慮する必要があるからです。48Vシステムを部分的に採用する場合、DC/DCコンバータのさまざまな安全面を考慮したスイッチング機能付加によるコスト増も課題となります。また48Vワイヤの完全な絶縁、48V/12Vが短絡しないようなネットワークの完全分離とそれに要するコストも考慮する必要があります。またオルタネータのロードダンプが発生した場合に備えて、ヒューズの規格、コネクタの規格なども合わせて検討する必要が出てきます。

もう1つの理由は、全体像が見えにくいということです。48Vのシステムと12Vのシステムは単体で動作したとしても、それを組合せて車両を動かすとどうなるのか、車両1台分で俯瞰することが困難です。またワイヤリング部分が通常温度と高温部と存在する場合、複数電圧との組合せが出てくるため、車両1台分での導入や評価、検討が困難になります。さらに、12Vシステムについては銅製のワイヤからアルミ製のワイヤに変更するといった場合、部品のサイジングや全体のワイヤリング総重量、総コストが見えにくくなるということも事実です。

図2. Capitalにおけるワイヤ・ハーネス開発環境図2. Capitalにおけるワイヤ・ハーネス開発環境

このような現実を鑑みた上で求められる開発環境についてまとめると、以下のようになります。

  • 車両1台分をプラットフォームとして認識し、全体像を把握できる
  • 論理や制約に基づいてワイヤリングを素早く合成できる
  • コンポーネントのサイジングを自動的に設定できる
  • 機能検証と故障モード解析に対応している
  • 影響度測定と評価からの指標を瞬時にフィードバックできる
  • 複数のアーキテクチャ構成シナリオを比較検討し、最適な意志決定ができる

プラットフォーム視点のソリューション

メンター・グラフィックスが提供するワイヤ・ハーネス統合開発環境であるCapitalは、前出の要件をすべて満たしたソリューションです。ワイヤリングについては従来からのインタラクティブな設計手法と、ジェネラティブ手法と呼ばれる自動生成型の設計手法がサポートされています。

この手法を用いると、個別のワイヤ配線を設計するのではなく、あくまでもプラットフォーム(車両)全体を「Correct-by-Construction」による手法で設計できます。この手法に基づいて設計を行う場合には、設計プロセスの抽象度を高めることが重要となります。従来のワイヤ配線設計とは異なり、必要な出図や出力を、ルールや制約により制御できる柔軟性が必要です。またIPやノウハウを数値化、ルール化して、設計環境に取込み、それを再利用することも重要です。

図3. 自動合成されたワイヤ・ハーネスの指標を用いた総合評価図3. 自動合成されたワイヤ・ハーネスの指標を用いた総合評価

プラットフォーム設計では以下を入力として設計を開始します。

  • 一般に3Dの機械系CADから取得可能なトポロジ情報
  • 論理的なシステム接続情報
  • IPやノウハウなどのルール、制約情報
  • 車両諸元やオプション情報、バリアント情報

これらを組合せることで、プラットフォーム設計が可能になります。この場合、以下のものが出力となります。

  • 物理的な回路図
  • ハーネス設計図
  • サービス対応のドキュメント

48V/12V混在システム移行に伴う解析

プラットフォーム視点の設計環境を採用すると、48V/12V混在システムへの対応も適切に行うことができるようになります。そのためにはまず、既存のプラットフォームから更新対象の12Vシステムを削除し、次に新しい48Vシステムを関連付けします。更新される部分のみを変更するため、影響範囲外のワイヤリングは確保されます。

システム設計において更新が行われた後は、物理配線を更新する必要があります。更新といっても、この過程は自動合成によって実行されるものです。変更箇所および必要とされた新規配線のみが自動的に合成されます。さらに定義されているルールにより、物理的な情報、すなわち電線の経路、スプライシング、マルチターム、使用材料なども更新されます。車両全体の再設計は不要で、48Vという新たなテクノロジを導入するのに必要な影響範囲のみを自動的に合成します。

これと同時に、新たな技術がもたらす未知のリスクも回避する必要があります。全体的なプラットフォーム設計の中では、各電装システム間の相互作用を完全に理解して動作を保証することによって、車両のコンプライアンスを満たします。例えば、48Vシステムを既存の12Vシステムから置換えた場合に、スネイク回路と呼ばれる異常な廻り込み経路が形成されていないかを確認します。また、48Vシステムが何らかの影響で12Vシステムに影響を与えることはないかを確認します。複数電源が交差するすべてのポイントでDC/DCコンバータが使われているかも確認します。その他、ヒューズ抜け、グラウンドの浮きなどを網羅的に考慮することが可能です。さらに、ワイヤ、ヒューズ、コネクタなどのサイジングも自動化されていることが、新たなテクノロジ導入には欠かせません。

故障モードにおける解析や自動サイジングは、ワイヤ配線を個別に設計していたのでは不可能です。プラットフォームの視点から全体にわたって抜け漏れのないように解析し更新できる環境が必要です。

指標と検討

さて、新たなテクノロジを採用する動機として、設計が迅速に行えるということだけでは不充分です。そのテクノロジがもたらす効果、ビジネス上の価値、プロセス全体のコストなどを総合的に判断することが必要です。

Capitalを採用している場合、新たなテクノロジ導入の有効性を数値化するために各部門に依頼する必要はありません。エンジニアの設計環境を離れることなく、その場で設計の指標を導き判断することができます。設計の数値的な比較により、どのような変更が効果的で実現可能なのかを判断できます。また、どのようなオプションが全体の重量に対して効果を与えているか、どのような電線種類が最も使われているか、各電線種類の長さの合計、コストなどを指標として見ることができます。ここでもプラットフォームの視点から総合的に判断することが可能です。

まとめ

今回は、48V/12V電圧混在システムへの移行という新たなテクノロジの導入に対して、そのテクノロジがもたらす課題やリスクをどのように回避すべきか、設計の変化によってコストや重量などの影響度を数値化して評価するソリューションについてご紹介いたしました。最も重要なのは、このような評価/検討、指標による総合的な判断/意志決定が、すべて仮想プラットフォーム上で実行できるということです。試作ゼロは無理だとしても、試作のフェーズに入る前になるべく多くのリスクを洗い出し、最適解への意志決定を行うことが可能です。特に新たなテクノロジを導入する際には、このような仮想化技術がその威力を発揮します。

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