News and Views 2007 Autumn

[FEATURE-2] Analog/Mixed Signal Design

先端LSI設計における信頼性のシミュレーション

環境のセットアップ

信頼性シミュレーションのための環境はEldo UDRM (User Defined Reliability Model)を使って作成されました。UDRMの特長は以下の通りです。

  • Eldoに対するダイナミックなリンクとして使用可能。
  • 物理解析の結果や実験結果から、C言語を使って自由に劣化モデルを作成できる。。

Eldo UDRM APIは、以下のパラメータに対するリード/ライト機能を提供しています。

  • 各インスタンスのトランジスタ・パラメータ(W、L等)
  • ユーザー定義の応力パラメータ
  • グローバル変数(温度、シミュレーション時間等)
  • SPICEモデル・パラメータ (VTH0、U0等)

これらのアクセス関数を使うことで、処理を簡単に記述することが可能です。例えば経年劣化モデルは、トランジスタの動作条件に基づいて選択されます。

信頼性シミュレーションの手順は、まず、経年劣化を全く考慮しないシミュレーションを行います。ここでは、定義済みで文書化されている応力モデルと、過渡解析の結果を用いてトランジスタが影響を受ける応力の量を計算します。この計算された応力量結果に基づいて、SPICEモデル・パラメータの経年劣化を考慮するように更新します。その後、今度は更新されたSPICEモデルおよびパラメータを使ってシミュレーションを再度実行します。このSPICEモデルを使ったシミュレーションの新しい手法に基づいて、プロセスをさらに細分化することができます。解析には2-ステップ・フローとN-ステップ・フローを準備しました。

2-ステップ・フロー

2-ステップ・フローは極めて単純です。まず、元のトランジスタを使ったシミュレーションを実行します。この場合トランジスタには何らのバイアスも応力も適用されないため、ここでの結果が比較の基準となります。この基本シミュレーションが終了すると、全てのトランジスタについて、それぞれ受けた損耗の度合いに基づいて応力が計算されます。その後これらのモデルをトランジスタに適用し、シミュレーションを再度実行します。この2番目のステップにより、経年劣化シミュレーションの結果が得られます。

N-ステップ・フロー

各ステップの内容は2ステップ・フローと同じです。ただ、ターゲットとなる劣化期間(Tage)はより短い間隔でTiに分割されます。ここでは以下の式を利用します。

Tage = ∑Ti (i=1 to N)

応力の計算が各インターバルの最後に更新されてから新たなシミュレーションが実行されます。この処理をt=Tageまで繰り返します。N-ステップ・フローは繰り返し計算を必要とするため高い精度を達成できますが、2-ステップ・フローよりかなり遅くなります。
次に処理手法について説明します。まず応力モデルはC言語で記述され、その後記述をコンパイルします。このオブジェクト・ファイルが 信頼性シミュレーションのライブラリとなります。その後、信頼性シミュレーションのための記述をネットリストに追加し、そしてネットリストとライブラリを選択することで、信頼性シミュレーションを実行することができます(図5)。

図5: 信頼性シミュレーション処理フロー図5: 信頼性シミュレーション処理フロー

シミュレーション結果は波形として確認できるため、メジャーメント機能も使用できます。リングオシレータの例では、特定期間の出力に対するメジャーメント機能を指定し、N-ステップ・フローを実行することで、各ステップで所望の結果が出力されます。また、信頼性シミュレーションにより更新されるSPICE パラメータも確認可能で、これらのシミュレーション結果から、最も劣化の激しいトランジスタを特定することが出来ます。また、劣化によるパフォーマンスへの影響が最も大きい部分は回路のどの部分であるか特定することが可能で、さらに、原因を解析し、特性劣化を最小化するために回路の詳細な検証を行います。

実製品への適用

この信頼性シミュレーション環境は、当初ハイエンド プロセッサ設計用として開発されたもので、高い信頼性と厳しい性能要件を求められるアプリケーションです。以下の項目が確認されました:

  • デジタル部品
    • スタティック・タイミング解析により発見された劣化の確認
  • アナログ部品
    • 伝播遅延劣化量の確認
    • 振幅劣化の確認
    • ピリオド劣化の確認
    • その他

信頼性シミュレーションの結果を図6に示します。これは単位を年数としたクロックラインの結果を示しています。劣化期間は20年に設定しました。図が示す通り、劣化により立ち上がり時間と立ち下がり時間が共に遅くなっています。これは、劣化によりセットアップおよびホールド時間が影響を受けることを意味します。この結果をも基に、劣化を考慮したSTA結果/レポートのライブラリを構築しました。

図6: クロックラインの信頼性シミュレーション結果図6: クロックラインの信頼性シミュレーション結果

ミキサーの設計に対して信頼性シミュレーションを行った結果を図7に示します。劣化期間は20年に設定したところ、ミキサー出力の振幅が劣化によって変化していることが明らかになり、他の特性にはほとんど変化が見られませんでした。このように、この特性チェックと同じ手法を使用してアナログ部品の劣化チェックを実施することができました。その結果、SPICEを使った信頼性シミュレーションは簡単且つ効率的で、使い易いことがわかりました。

図7: ミキサー出力の信頼性シミュレーション結果図7: ミキサー出力の信頼性シミュレーション結果

まとめ

本稿では、一連の劣化予測モデルと故障等価回路モデルを作成する為に用いた手順を紹介しました。このプロセスに対する重要性から、HCIとNBTI の物理的仕組みについても簡単に説明しました。弊社はEldoのUDRMを使用した新しいSPICE信頼性シミュレーション手法を用いてこれらのモデルを実装しました。この手法および達成された結果により、劣化を計測することが可能であるばかりか、劣化のレベルをトランジスタにまで絞り込むことにより、回路の改良を容易に行えるようになることが実証されました。

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