News and Views 2007 Summer
[FEATURE] PCB Design
フレックスリジッド技術によるPCB製造
剛性と柔軟性の両立
フレックスリジッドPCB技術は進化を続けており、基板メーカーは技術の限界を拡張しています。今回の特集はこのフレックスリジッドの、概要、利点と問題点、将来性など様々な視点から考察します。
フレックスリジッドPCB(プリント基板)の製造は、マルチレイヤ、2次元サブストレートと類似する点もありますが、設計工程において注意深く管理すべき多くの要点があります。設計を小型のパッケージに納める際にフレックスリジッドを使って空間を最大限に利用することは、サーカスで人が小さな箱に入る曲芸のようなものです。接続の為のワイヤやコネクタを両面フレキシブルコア基板で置き換えることにより配線の混乱から解放されます。複数のリジッドなPCBを接続したシステムは、フレックスリジッドに置き換えることでパフォーマンスと信頼性の向上を実現することができます。しかし、フレックス技術のメリットを活用するには、設計者はフレックスリジッドの製造プロセスを知り、製造の遅延とコストの増大につながる設計のエラーを回避する方法について理解しなければなりません。
フレックスリジッドの用途
PCB設計でフレックスリジッド技術が適していないアプリケーションは益々少なくなっています。しかし、1990年代に表面実装部品がリード部品を置き換えた時のような勢いでは採用されていません。フレックスリジッドは全てのアプリケーションに適用可能というわけではありません。例えば、バックプレーンに使用されているようなリジッド基板を置き換えるには適切ではありません。フレックスリジッド基板は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、MP3プレーヤ等、小型ハンドヘルド型のコンシューマ向け電気製品に適しています。軍需および航空宇宙産業は他を大きく引き離してフレックスリジッド技術の最大のユーザーであり、軽量化と狭い空間への実装に活用しています。その一例として、複数のリジッドPCBで構成されたミサイルベースの戦闘サブシステムを、フレックスリジッドを使って無人飛行機に搭載する弾頭として置き換えるプロジェクトがありました。このプロジェクトでは、50%の空間削減と90%以上の重量削減が求められていました。また、バイオメディカル産業では補聴器やペースメーカー、徐細動器など埋め込み可能装置にフレックスリジッドを採用しました。これらの装置では、フレックスリジッドによる信頼性の向上が大きく役立ちました。薄いフレキシブル層を組み合わせ、パッケージ部品をキャパシタ、インダクタ、抵抗などの埋め込み部品技術で置き換えることにより、PCBのフットプリントは更に縮小できます。フレックス材料とリジッド積層材料の低誘電率も、インピーダンスをコントロールする必要のある高速信号にとって有益です。
フレックス積層材料を活用する為にPCBが「フレックス」である必要はありません。フレックス積層材料は極めて薄い、多層リジッドPCBの製造にも利用可能です。厚さ0.001"~ 0.002" のフレキシブルな絶縁層は薄いリジッド基板の製造に便利です。フレキシブルな積層材料を使って製造されますが、基板そのものはリジッドです。これらの多層基板はリジッドPCBよりも薄く、軽量であり、より小さな空間により多くの機能を搭載できる他、耐衝撃性(ハンドヘルド機器を落とした場合等)も優れています。
フレキシブルおよびフレックスリジッドの種類
IPCはフレキシブル回路を5種類の基板タイプに分類しています。これは表1に示すIPC-2223A仕様に定義されています。Type 1、2、3は完全にフレキシブルな回路でリジッドな材料が含まれません(補強材はスタックアップに含まれません)。Type 4はリジッドな材料とフレキシブルな材料の組み合わせであり、これは部分的にリジッド化したフレックスおよびフレックスリジッドに対応します。Type 5はType 4と同じですがメッキ・スルーホールを含まないものです。
IPCは更に、フレキシブル回路をその用途によっても分類しています。Use Aは「flex-to-install」と呼ばれるタイプで、取り付け時にフレックス性を利用するもののアセンブリに組み込まれた後は動かないものです。 Use Bは「dynamic flex」と呼ばれ、回路はそのライフサイクル中、繰り返し曲げることができます。同様の基板分類が、MIL-P-50884仕様にも含まれています。

コスト要因
フレックスリジッドはコスト的には不利です。コスト高となる主な3つの要因は、原材料のコスト(特に無接着剤型積層材およびノーフロー型プリプレグ)、パネル使用率および歩留まりです。フレックスリジッドの製造コストは標準的リジッドFR4基板の5倍から7倍にもなります。フレックスリジッドが携帯電話等の低コスト、大量生産の製品であまり見られないのはここに所以があると思われます。殆どの携帯電話メーカーは、全体の製品コストを抑える為、フレックスリジッドの使用を避け、多層フレックスおよび部分的にリジッド化した「rigidized」フレックス基板を選択してきました。また、フレックス材料を賢く選択することもPCBのコストに影響します。接着剤を使用した積層材料は通常$2/sf程度ですが無接着剤型積層材料は絶縁層の厚さによって$8/sf以上のコストがかかります。接着剤型積層材料は片面あるいは両面フレックスに最適ですがフレックスリジッドには適しません。日常的に多層フレックスリジッドを製造しているメーカーの多くは、接着剤型積層材料をできるだけ避けています。これらの積層材料に含まれるアクリル接着剤はZ軸方向に膨張しやすく、製造時の薬剤や熱による劣化もあります。フレックスリジッドPCBでは、ここが弱点となります。
フレックスリジッド向けの設計を評価する際には、低コスト化の為の代替案として部分的にリジッド化した「rigidized」フレックスの利用も検討すべきです。「rigidized」フレックスとは、1層以上のフレキシブル回路の上に、特定のエリアを強化する目的でリジッド材料が配置され、積層化されたものです。リジッド材料にエッチングやメッキを行う必要はなく、ただ穴と外形が加工されていればよい為、PCB加工時間は短縮されています。「rigidized」フレックスは片面部品実装に最適です。リジッド材料(通常FR4)は主として部品を実装する場所あるいは接続部分で基板を補強するために使用されます。「rigidized」フレックスはフレキシブル基板の利点を提供するとともに、必要な場所にリジッド材料の強度を持たせたものです。
フレックスリジッド向けの設計
フレックスリジッドPCBを設計する際には、製造プロセスに影響するあらゆる要因を考慮する必要があります。リジッドPCBと同じようにフレックスリジッドPCBを設計することはできないのです。また、曲げ部分については、設計要素が応力により破損したり曲げの荷重により導体が剥がれないように処理しなければなりません。
殆どの標準的なリジッドPCBには、共通の製造「レシピ」が存在します。メーカーの装置や環境等による若干の工程の違いはあるものの、一般に標準的な4層リジッドPCBはいづれも同じように製造されます。フレックスリジッドPCBにはこれが当てはまりません。殆どのフレックスリジッドPCBはそれぞれが独自の特徴を持っている為、それぞれに対する設計には個別の「レシピ」が必要なのです。標準的な4層フレックスリジッド PCBはコアとなる両面フレキシブル基板が外側のリジッド層に挟まれています。フレックスリジッドPCBの各層は、上の層あるいは下の層とは異なる特性を示します。リジッド層の境界を超えて伸びるフレキシブル層のアーム部分はリジッド材料で終端される場合も、そうでない場合もあります。フレックスリジッド設計ではこのような違いによってそれぞれが独自の製造プロセスを必要とします。「標準的な」フレックスリジッドのレイヤ・スタックアップというものは存在するかもしれませんが、設計の要件により選択可能なオプションは制限され、最終的にはメーカーも限られてきます。
フレキシブルな基板を曲げる場合には、接合されている導体が断裂する可能性が常に存在します。導体が断裂する可能性は、経験の浅いフレックスリジッドPCB設計者が最も見落としがちな製造上の問題となるでしょう。この危険性を最小化する為、曲げ領域を通る導体はこれらの問題を避ける為の基本的なルールに従う必要があります。これには以下が含まれます:
- 曲げ領域内の配線は曲げ軸に対して直角とし、ビア、コーナー、配線幅の変化がないこと
- 電源プレーン等大きな導体面を含めなければならない場合、参照プレーンでなければ塗りつぶしの代わりにクロスハッチを使用すること
- 曲げ領域内で隣接する層の配線が重なっている場合、曲げの外側になる配線に対する応力が高まる。この配線が重なった状態をIビーミングと呼び、これは避けなければならない(図1参照)。 。

また、実物大のMylarあるいは紙を使ったPCBのモックアップを作成し、回路の大きさとコネクタを確認しておくことが推奨されます。これを PCBの筐体内に配置し、収まりを確認し、コネクタ、曲げ、コンタクト表面の位置を修正します。このようにモックアップを使用することで、CAD上では見つからなかったエラーが発見できるケースがあります。
また、最小曲げ半径、絶縁体の厚さと種類、箔の重さ、銅メッキ、回路全体の厚さ、層数および曲げ回数等、メカニカルな条件も検討しなければなりません。これらの各要素を、設計プロセスのできるだけ早い段階で基板メーカーと確認しておく必要があります。これらの要素を検討しておかないと、製造が不可能なものを設計してしまう可能性があります。
フレックスリジッド設計のもう一つの重要なポイントとして、スタックアップのバランスが挙げられます。バランスのとれたスタックアップとは、基板の中心(中立軸)からの材料の厚みが対称であることです。中立軸の両側の構造のバランスをとることが重要です。フレックス層は PCBの外側ではなくスタックアップの中心、あるいはコアとするべきです。理想的には、中立軸の両側で銅箔の重量が等しくなるべきです。外側の層は曲げによる最も厳しい応力にさらされる為、太い導線をこれらの層に配置します。可能であれば、細い、壊れやすい導体は内層に配置し、曲げ等による応力から保護します。
製造および部品組み立てに対するサポート
フレックスリジッド基板は通常の基板同様に部品組み立てラインで処理できます。全てのパネルレイアウト同様、PCBの周囲にはリジッド材料による支持部分の追加が推奨されます。標準的なリジッドPCBでも同様のことが言えますが、フレックスリジッド パネルに配置するリジッド材料の位置は歩留まり向上に重要です。リジッドPCB層を取り除き、上または下のフレックス層を露出させる為の窓抜きはよく考えて配置しなければなりません。これらの窓抜き位置の配置は、パネルの強度を損なわない為に重要です。フレックス層にも同様の窓を追加し、フレックス材料がルーターのビットに触れないようにしなければなりません(図2、3参照)。


クモの足のような形のPCBの場合には、可能な限りそれぞれの「足」がリジッド材料で終端するようにします。足をリジッド材料で終端できない場合には、製造時にパウチ処理が必要となるかもしれません。パウチ処理では、フレックス基板の足の部分のノーフロー・プリプレグ(リジッド層ではなく)に窓を切り抜きます。これにより、足の周囲にパウチが形成され、PCBの最終ルーティング加工時に取り除かれます。この工程には処理時間の増加が伴い、設計のコスト増大にも繋がります。
フレックスリジッド基板メーカーの選択
フレックスリジッド基板メーカーを選定し、設計の早い段階で協力関係を結ぶことにより最適な歩留まり達成とコストの最小化を図ることができます。設計が比較的一般的なフレックスリジッドであれば、多くの基板メーカーから選ぶことができます。層数が多い場合や、変わったドリル加工が必要なフレックスリジッドの場合、選択肢は限られます。フレックスリジッド基板メーカーを選択する際には、この技術を専門とするメーカーを探すと良いでしょう。標準的な基板のサンプルを取り寄せ、平均的な技術レベルについて明確に理解しておきましょう。メーカーの最大能力とプロジェクトの要件を比較しておきます。メーカーの限界に挑戦するのはお勧めできません。一番良い方法は、メーカーの能力が設計の要件を上回っているが、コストが高すぎて取引できない程にはかけ離れていないところを見つけることです。また、設計のレビューを手伝ってくれる経験豊富な開発サポート要員が多く存在することを確認します。プロジェクトの初めに、機械エンジニアと電気エンジニア、PCB設計者と基板メーカーで構成される設計レビュー・チームを編成できれば理想的です。これらの人材をプロジェクトの早期から関与させることでコストの低減と、エラーによるコスト増大の回避が可能になります。
まとめ
フレックスリジッドPCB技術は進化を続けており、基板メーカーは技術の限界を拡張しています。材料メーカーも材料製造コストの低減を続けることで、より低コストのフレックスリジッド基板が出現するでしょう。フレックスリジッドの低コスト化が実現すれば、その利用も劇的に拡大するものと確信できます。複数のリジッドPCBが、同じ製造コストと歩留まり率のフレックスリジッドで置き換えられたシステムを想像してみてください。これらの製品はより小型化、軽量化され、現在よりも信頼性が増すのです。衝撃や振動によるフィールドでの故障も減り、ワイヤやコネクタの数が少なくなることで信号ノイズや輻射の問題も低減されます。このことが次なるパッケージングのフロンティアを切り開き、スマートフォンがラップトップにとって代わり、両方持って歩く必要がなくなるかもしれません。その可能性はあります。そうですよね?
Mentor Graphics Corporation
