News and Views 2010 Winter
[FEATURE STORY | シリコンテストおよび歩留まり解析]
診断ドリブンの歩留まり解析で原因をより早期に特定するTessentファミリ
65nm以下の先端テクノロジ・ノードで開発されているICは、わずかな製造ばらつきがICの性能低下や故障を招く原因になります。さらに、設計に固有なフィーチャーに影響される新しい欠陥メカニズムが生まれています。製造プロセスと、ばらつきに対してより敏感になったレイアウト・フィーチャー間の複雑な関係により、システマティックな不良に起因する歩留まり低下問題が顕在化しています。歩留まり解析手法を強化しなければ、量産までの期間は長期化し、成熟歩留まりも満足のいくものとならず、製品品質にも影響が出る可能性があり、結果としてメーカーの収益性が脅かされます。診断ドリブンの歩留まり解析とは、出荷テスト結果、ボリューム診断の結果を統計的に解析して、物理解析を行う以前に歩留まり低下の根本原因を特定する手法です。この手法により、原因特定までのサイクルを、従来比較で75~90%短縮することができます。本稿では、Tessent™ DiagnosisならびにTessent YieldInsight™を使った診断ドリブンの歩留まり解析フローの導入メリットを紹介します
はじめに
ナノメータ・テクノロジにより、1チップに搭載可能なトランジスタ数を飛躍的に増加することができる反面、歩留まりの急速なランプアップや高い歩留まりの維持は難しくなります。65nm以下のプロセス・ノードでは、システマティック不良が歩留まり低下要因の75%以上にまで影響しています。不良デバイスには重要な情報が多分に含まれており、歩留まりの低下要因、歩留まり向上を制限する欠陥メカニズムに対して貴重な考察を得ることができます。
従来の歩留まり解析プロセスでは、製造プロセスからのデータとテスト結果を使って、不良デバイスをシステマティック欠陥とランダム欠陥に切り分けます。同じような故障モードのデバイスをグループ化し、各グループの代表的デバイスを選択して物理的欠陥解析(PFA)を実施し、歩留まり低下の原因を突き止めます。その上で、製造プロセスの変更、設計の変更、その他の欠陥発生を抑止するための対策がとられます。
トランジスタ・サイズが微細化するに従って、多くのシステマティック欠陥がランダムに見えるようになります。つまり、ランダムな問題とシステマティックな問題の切り分けが、以前より複雑になっています。その結果、システマティック欠陥を含まない不良デバイスにPFAを実施するという、無駄が発生する可能性が生じます。これを補うため、PFAをより多くのデバイスに実施しなければならず、同時に、不良デバイスを解析する時間とコストが、劇的に増大します。
スキャンベース故障診断は、欠陥の発生箇所を特定する確立された手法です。しかし、従来の故障診断ツールは、効果的な歩留まり解析に十分な情報を抽出できていませんでした。歩留まり管理システム(YMS)は、様々な情報ソース(製造装置など)のデータを可視化するのに有効ですが、故障診断結果を処理し、解析するように設計されたものではありません。テスト結果を診断ドリブンの歩留まり解析で最も有効に活用するには、故障診断プロセスおよび故障診断結果の解析において特定の条件を満たす必要があります。
診断ドリブン歩留まり解析
図1に示す診断ドリブンの歩留まり解析フローでは、故障診断と統計的歩留まり解析が統合されています。歩留まり解析フローでは、診断は初期の段階で 使用されます。これにより、歩留まり低下の原因をPFAの前に特定することができ、PFA用デバイスの選択が非常に効率的になります。その結果、PFAの 成功率が高まり、コストが高い物理解析装置の投入を大幅に削減できます。
メンター・グラフィックスの診断ドリブン歩留まり解析ソリューションは、Tessent Diagnosisの自動診断機能とTessent YieldInsightの高度な統計的解析およびデータマイニング機能を組み合わせたものです。このソリューションにより、歩留まり低下の原因を特定す るまでの時間を大幅に短縮し、従来の方法では見逃されてしまう恐れのあった歩留まり阻害要因を特定することができます。
歩留まり解析向けに診断データを最適化
従来のフローでは、不良解析に故障診断を適用する場合、主な目標は特定のダイで故障を引き起こしている欠陥の位置を特定することでした。しかし、故障診断を歩留まり解析にフルに活用するには、故障箇所の特定以上のものを提供できなくてはなりません。
歩留まり解析において重要なステップは、同じ欠陥メカニズムにより不良となっているデバイスを特定し、グループ化することです。複数の不良デバイス が、すべてのテストパターンで同じサイクル、同じピンで故障している、あるいは故障診断によりすべてのデバイスにおいて同じネットに欠陥が発見されたな ら、このステップは簡単な作業となるでしょう。しかし現実には、同じ歩留まり低下の根本原因が様々な位置で欠陥として出現し、さらに不良デバイスの欠陥に はばらつきがあります。
例えば、特定のスタンダードセルに不良があり、他のスタンダードセルよりも故障しやすいというケースを考えてみます。1つのダイにおいて、このセル の特定のインスタンス1個が故障を引き起こしていたとしても、別のダイでは、同じセルの別のインスタンスが故障しているかもしれません。診断結果の中で歩 留まり解析にとって特に貴重な情報は、不良ダイに共通しているのは何か、ということです。このケースでは、それはセルのタイプであり、必ずしも欠陥の物理 的位置ではありません。
Tessent Diagnosisは、レイアウトを考慮した診断により、これらの問題に対処します。ロジックのみのネットリストに基づいた診断と比べて、レイアウトを考 慮した診断では診断の分解能が高まり、さらなる欠陥の分類(絞込み)が可能になります。以下は、レイアウトを考慮した診断がより詳細な結果を提供できる例 です。
- 2つのネット間のブリッジ(ショート)の場合、ネットペアがクリティカル・エリア内にある(隣接している)場合にのみ、有効な故障候補(Suspect:容疑者)として診断します。
- ブリッジ故障のネットペアの片方だけで故障が検出されるDominant型ブリッジの場合、BridgeのVictim(被害者)に隣接するネットをSuspectとして診断します。
- マルチ・ファンアウト・ネットのすべてのレシーバを解析することにより、オープンの位置をネットのセグメントまで絞り込むことができます。
図2はオープン欠陥があると診断されたネットを示したものです。マルチ・ファンアウト・ネットのどのレシーバがpass/failするかを観測することにより、ツールはSuspectの位置をネットのごく一部にまで絞り込むことができます。
歩留まり解析の観点から特に重要となるのは、レイアウト情報がレポートにどのように活用されるかということです。レイアウトを考慮した診断では、1つの不良ダイに対して故障の物理的位置をx, y座標、レイヤ、ロジックの位置、そして故障タイプまでレポートします。これらの情報を統計処理して、どのフィーチャーに注目すべきかを判断します。
レイアウトを考慮した診断に加えて、以下のような新しい故障診断技術も歩留まり解析には有効です。
- 欠陥がセル内部で発生する割合が50%にも達する場合があります。セル内故障診断により、インターコネクトの欠陥とセル内部の欠陥を明確に切り分けることができます。
- ロジック故障の10~30%は、スキャンチェーン上で発生します。高度なチェーン診断によりスキャンチェーン故障およびチェーンとユーザロジックにわたる、複合的故障が特定できます。
- 遅延故障は、一般的に欠陥全体の1~5%です。At-speed診断により、遅延故障を明確に識別することができます。
Tessent Diagnosisは、発生した欠陥を50種類以上のタイプに分類する診断機能を提供します。これらの属性は、Tessent YieldInsightによる統計的解析の根幹を成す基礎データとなります。
正確かつ意味のある診断結果を出すことに加えて、出荷テストでの故障診断において重要な条件は、テストコストに与える影響を最小限に抑えることです。歩留まり解析では通常、FA(故障解析)と比較してより多数のデバイスに対して診断を行います。このことは、故障診断を量産テストパターンで、多くの場合スキャンテスト圧縮を適用して実施しなければならないということを意味します。Tessent Diagnosisは、圧縮モードのTessent TestKompressパターン、ならびにTessent FastScanとリンクしてダイレクト診断することができます。
診断結果の解析と理解
歩留まり解析に対するボリューム診断の価値を最終的に決めるのは、診断結果を「どのように」使うかということです。主要な課題の1つは、価値のある情報と価値のない情報(ノイズ)とを区別することです。例えば、特定のタイプのANDゲートで故障が発生している不良チップの数が、他のタイプの論理ゲート起因の不良チップよりも相対的に多くなっている場合を考えてみます。これは、その特定タイプのANDゲートにシステマティックな問題が発生していることを必ずしも意味するものではありません。
一方、ウエハ全体にランダムに欠陥が分布しているように見えるケースを考えてみます。 特定のタイプのANDゲート起因の不良チップがウエハの中央に集中していれば、システマティックな問題を示しているものかもしれません。それは、不良チップの特定のエリアでの分布が、全体的な分布と大きく異なっているためです。
図1に示す通り、Tessent YieldInsightは「シグネチャ解析」を行い、実際の不良チップの分布を、理論的に予想される分布と比較します。8通りのゾーンタイプに対して50以上のシグネチャの解析を自動的に行い、解析ダッシュボードに結果を表示します。このダッシュボードには、調査する価値があるのはどのシグネチャなのか、そして予想される分布と実際の分布の違いがどの程度であるのかが明確に示されます。このように、Tessent YieldInsightはユーザがシステマティックな問題に起因する不良チップを浮き上がらせる手助けをします。
図3の左側のウエハ・マップは、200枚のウエハに含まれる115個の不良ダイのウエハ・スタックマップの例です。ダイの分布は比較的ランダムです。前述の解析を適用することにより右側のウエハ・マップが生成され、メタル3にブリッジ欠陥があると診断されたダイを示しています。この種の欠陥を持つダイがウエハの中央に集中していることは、システマティックな問題を意味しています。この問題の特定は、診断結果にゾーン解析を適用することにより可能になったものです。
特定のフィーチャー、例えばある種の欠陥タイプが歩留まりに悪影響を与えている可能性が高いと判断された場合、さらに「不良解析」を進めて、それぞれのシステマティックな問題の影響を理解し、PFAを行うデバイスの選択に進めることができます。特定のシグネチャと関連づけられたデバイスだけを分離して、その問題の影響を明確に観測できます。残りのデバイスに対しても、他の問題を調べるための解析を実行することができます。複数のシステマティックな問題を識別することにより、PFAを実施する前に、どの問題に優先して取り組むかを決定することが可能になります。
PFAを実行するデバイスは診断結果のシグネチャおよびフィーチャー解析に基づいて選択されます。単一のSuspectで診断スコアの高いデバイスを選択することで、PFAの成功率は最大になります。デバイス選択後、不良解析を行って疑われる原因の存在を確認することにより、たとえばプロセスの変更、設計の変更、ライブラリの変更など、修正のための対策をとることが可能になります。
まとめ
Tessent Diagnosisによる高精度なボリューム・スキャン診断と、Tessent YieldInsightによる可視化と統計的解析を組み合わせることにより、効果的な歩留まり解析フローを実現します。歩留まり解析を、設計レイアウトを考慮したボリューム・スキャン診断結果に基づいて適用することにより、歩留まり損失の原因を特定するまでの期間を75~90%短縮し、従来の方法では見逃されてしまう恐れのあった成熟歩留まり損失の1~2%を特定することが可能になります。


