News and Views 2012 Winter

[SUCCESS STORY | PCB System Design]

設計効率の劇的な改善をExpedition EnterpriseフローとXtreme PCBで実現
株式会社 PFU

株式会社 PFU(以下PFU)では、XtremePCB™と、Expedition® PCBの自動化機能により、最大65%の設計期間短縮を実現しました。同時に、HyperLynx®によりパワー・インテグリティ(PI)解析を行い、一発完動を達成しました。

PFUについて

PFUは、石川県に本社をおく会社で、イメージスキャナ、組込みコンピュータを開発および販売しています。イメージスキャナの分野では、世界シェアNo.1、組込みコンピュータにおいては幅広いラインナップをそろえ、常に最先端の製品を提供しています。

PFUのPCB設計チーム:<br/>
(上段左から)吉永斉司氏、竹本康弘氏、千川康秀氏、村井秀俊氏、有馬浩史氏<br/>
(下段左から)天方裕介氏、中川純一氏、中川幾夫氏、島津康平氏PFUのPCB設計チーム:
(上段左から)吉永斉司氏、竹本康弘氏、千川康秀氏、村井秀俊氏、有馬浩史氏
(下段左から)天方裕介氏、中川純一氏、中川幾夫氏、島津康平氏

設計効率改善への背景

PFUは、1988年にメンター・グラフィックスのBoard Station®フローを導入して以来、20年以上にわたってメンター・グラフィックスのプリント基板(PCB)設計ソリューションを採用してきました。しかし、複雑化する製品設計と、市場での競争で勝ち抜くため、設計効率を劇的に改善する新しい設計環境が必要となってきました。

特に、ここ数年の製品開発の取り組みにおいて、PCB開発に求められる技術は飛躍的に高度化しており、低消費電力化や高速化に伴う電源電圧の低電圧化、電源種の増大から、電源を含む伝送設計が非常に複雑になり、またEMI/EMC対策が困難になるなど、設計難易度が上昇していました。また、海外を含む他社との競争から、開発期間の短縮や低価格化といった課題もあり、これまでにない問題への取り組みが急務となっていました。

2007年当時使用していたBoard Stationは使い慣れたシステムではありましたが、自動化やシミュレーションとの統合、制約条件の管理などに限界があり、PFUは2008年に最新のフローであるExpedition Enterpriseフローへの移行を決断しました。

設計の課題

図1:AM120モデル210Gシステム オン モジュール図1:AM120モデル210Gシステム オン モジュール

図1は、新システムで設計を行った基板の一例です。この基板は、COM Expressに対応したシステム オン モジュールです。

この製品、AM120 モデル210Gは、インテルのCore i7/i5を搭載し、DDR3、PCI Express Gen 2、SATA3.0、DMI、ギガビット・イーサネットを搭載した手のひら大サイズの高密度な基板です。

この基板を開発するために、2つの大きなチャレンジがありました。

1つは品質(Quality)とコスト(Cost)面のバランスです。これは、限られた基板サイズに必要な機能を最大限に搭載した上で、EMIや電源の安定性など設計品質を確保しなければならない、ということです。

もう1つは納期(Delivery)です。インテルの新アーキテクチャ(Sandy Bridge)の発表と同時にシステム オン モジュールの新製品を発表する、という命題があり、予定通りの開発工程で仕上げるためには、基板の改版は許されない状況でした。

パワー・インテグリティ

これらのチャレンジに対応するための施策の1つとして、電源プレーン設計技術確立のためパワー・インテグリティ解析を導入しました。

設計初期段階では、回路設計と並行して汎用のSPICEシミュレータを活用し、デカップリング・コンデンサのおよその個数を求め、部品配置やパターン設計段階では、HyperLynx PIを活用してACノイズなどを解析しながら、プレーン形状やコンデンサの個数や配置の精度を高めていく、という設計手法を確立しました。

これにより、設計段階で電源プレーンの設計品質を大幅に高めることができ、パワーオン後の電源問題による改版を0にすることができました。また、当初の設計値からデカップリング・コンデンサを20個以上減らすことができ、この高密度な基板内に必要な機能を搭載することを可能としました。

レイアウト同時並行設計

図2:配置配線戦略の共有図2:配置配線戦略の共有

2つ目の施策は、レイアウト設計期間を劇的に短縮するために、同時並行設計手法を確立したことです。

これは単にXtremePCBを採用しレイアウト作業を複数人で行う、というだけではありません。以下に述べる取り組みによりさらに設計スピードを高める工夫を行っています。

PFUが施した工夫は、設計チームにおける配置配線戦略の共有です。

図2のように、電源部や、CPU、メモリ部など、エンジニアのスキルを考慮して担当エリアを決めた上で、全体的に部品配置や配線引き回しはどうするのか、誰がどの配線をどの層を使って引くのか、などといったフロアプランや配線戦略をチーム全体で把握し共有します。こうすることでエンジニアの意思が統一され、単純に複数人で設計するよりも格段に効率が上がります。

また、これにはレイアウト・エンジニアが回路設計や電気的条件を理解していることが重要であり、日頃から電気設計の知識を高める取り組みも行っています。

システム オン モジュールのような高密度基板では、Board Stationを使っていた時には、通常12週間程度のレイアウト設計期間を必要としていました。分割設計を行う事により、4人で並行作業をすれば、約30%の納期短縮が図れましたが、基板の分割と再結合の作業にかかるオーバーヘッドは大きく、これ以上の効率化を阻んでいました。分割設計では、相手の設計状況が見えず、再結合の際の作業が大きくなっていたのが原因でした。

XtremePCBでは、リアルタイムに相手の配線を見ることができるので、配線が重なることがなく、分割、結合の手間が一切必要なくなり、分割設計でのオーバーヘッドを解消できました。

図3:同時並行設計による効果図3:同時並行設計による効果

では、実際に同時並行設計によりどのくらいの期間短縮の効果があったでしょうか?

システム オン モジュールでのレイアウト期間を分析した結果が図3です。

一番上が、Board Stationを用いて1人で設計した場合です。先ほど紹介したように、レイアウト設計期間は約12週になります。それを4人で分割して設計した場合、約8週と30%程度の短縮が実現できました。

それに比較して、Expedition PCBを用いて1人で設計した場合、Expedition Enterpriseフローのレイアウト機能を活用することで設計期間は約10週となり、20%ほど短縮できました。

さらに、XtremePCBを使って4人で同時並行設計を行った場合、レイアウト設計期間が約4週となり、65%も短縮できたという実績が出ています。

レイアウトで短縮した期間はシミュレーションやデザイン・レビューなどの設計検証作業に費やすことができたため、これまで以上に設計品質を高め、改版なしの一発完動を実現しました。

まとめ

PFUは、これらの取り組みを実施することで、インテルが最新テクノロジを発表すると同時に、それを搭載するシステム オン モジュールAM160 モデル150Gの発表を行いました。このような動きは、これまでも、今後も継続していきます。

今後は、オートルータをはじめとする自動化の技術を展開し、さらなる生産性の効率化を進める予定です。

「同時設計は、設計期間短縮の切り札として、なくてはならないツールになっています。
自動化による、さらなる競争力の強化を目指しています。」

PFUテクノコンサル株式会社
吉江マネジャー

第23回 PCB Technology Leadership Award

メンター・グラフィックスでは、毎年PCB Technology Leadership Award(略称TLA)という表彰プログラムを実施しています。これは、PCB設計に携わる世界中の企業より最先端の設計事例を応募していただき、メンター・グラフィックスが委託した第3者機関により優秀な設計を公平に選考、表彰するものです。
2011年のTLA、コンピュータ/ブレード/サーバ/メモリーシステム部門においては、PFUのシステム オン モジュールが受賞しました。
おめでとうございます。

第23回PCB TLA 授賞式:
(左から)PFUテクノコンサル株式会社
中川純一氏、天方裕介氏、
メンター・グラフィックス・コーポレーション
Jamie Metcalfe