News and Views 2012 Autumn / Vol. 3: ものづくり

HyperLynxによるSerDesチャネルプロセスの検証

近年のLSIの微細化と市場要求に伴い、PCB基板上でのデータ転送は確実に高速化の方向に進んでいます。テクノロジの進化につれて、より身近な製品で高速インタフェースが使われ始めたのも特徴と言えるでしょう。

通信インフラストラクチャなど、ハイエンドのシステムに用いられている最先端のインタフェース技術に関しては10Gbps以上の通信帯域を持つアプリケーションもあり、最近では20Gbpsのインタフェースを持ったFPGAも発表されています。メモリに関しては、DDR3/4において2Gbpsを超えたスピードが用いられてきています。

PCI-Express、DDR2、Serial ATAのようなアプリケーションで多くの使われている高速バスでも数百MHzから1GHz以上の周波数で動作し、厳しいタイミング・マージンが課せられています。これらの高速信号は、バックプレーンやケーブルを介してメートル単位の長さを飛ばすこともあり、いかに良好なシグナル・インテグリティ(SI)を保つかが、高い信号品質のシステムを構築する上で重要になってきています。

また、より微細で安価な製品開発の必要性というプレッシャーの増大に伴い、プリント基板(PCB)レイアウト密度が非常に高くなってきています。性能を犠牲にすることなく効率的に高速信号を扱うPCBを設計、実装するためには、高速解析と配線制約作成が必要となってきています。

図1. 通信信号高速化のトレンド
図1. 通信信号高速化のトレンド

図2. インターコネクト・モデルを各部品の動作記述に使用
図2. インターコネクト・モデルを各部品の動作記述に使用

これら高速信号を扱うPCBの設計手法では、配線に対して元の電気的要件に適合するかを検証することが必要です。基板上のネットすべてにポスト配線信号解析を実行するなどSI解析は必須の作業になり、そのためのモデリングが要求されます。5Gbps以上の信号伝送を解析するには、これまで意識していなかったビアやコネクタの3次元インターコネクト・モデルが必要になってきます。

解析においては、実配線前のプラニング時と配線完成後において、それぞれ最適なインターコネクト・モデリングを選んでSIのシミュレーションを行うことが効果的でしょう。これはつまり、プランニング時には2次元の配線モデルを使い、基板完成後にはSIや信号品質を保つ手法として3次元のモデルを使うという手法です。

この解析を行うシミュレーション・ツールとして、メンター・グラフィックスはHyperLynxを提供しています。

HyperLynxの使用により、PCB上で扱う高速信号の検証が可能になります。チャネル検証プロセスには損失(ロス)とジッタの解析があり、コンプライアンスで定義されたアイマスクに対してのどの程度のマージンを確保できるかを検証する作業が求められます。その実行に際しては、2通りの解析手法があります。

図3. チャネル検証プロセスのキーポイント
図3. チャネル検証プロセスのキーポイント

1つ目に挙げられるのは、各周波数帯域でどれだけの損失があるかの検証を行う周波数ドメイン解析です。2つ目は、縦軸に電圧、横軸に時間のパターンとり、それを見ながら回路設計者が解析を行うタイムドメイン解析です。

チャネル、すなわち高速信号伝送路の開発においては、チャネル要素の識別を行った上で最適なチャネルモデリングを実行する必要があります。

PCBのチャネルを定義するための方法の一例をご紹介しましょう。メンター・グラフィックスのPCBレイアウトツールであるExpedition PCBを用い、2次元の要素抽出に関してはHyperLynx BoardSimから配線トポロジを出力させる方法が有効です。各種形状の3次元要素抽出には、フルウェーブ電磁界解析ツールであるHyperLynx 3D EMが適しており、要素の抽出後にチャネル定義を行います。HyperLynx GHz(バージョン8.2以降)を使用すると3次元ビアモデルの生成を実行し、SerDes検証向けの統合化が可能になります。

図4. PCBチャネル開発プロセス
図4. PCBチャネル開発プロセス

最近のSerDes解析トレンドとして、IBIS-AMIを使ったSI解析が挙げられます。IBIS-AMIとはI/O Buffer Information Specification Algorithmic Modeling Interfaceの略で、高速SerDesシミュレーションのために用意された新しいモデルのフォーマットを指します。IBIS-AMIにより、SerDesのSI解析を短時間で正確に実行することが可能になりました。このモデルは既存のIBIS規格に追加されたもので、実行モデルが含まれることが特徴です。チャネルの定義が完了したら、このIBIS-AMIモデルのドライバ、レシーバの割り付けを行うことにより、タイムドメイン解析が実施できます。さらにチャネルの品質検証のために、周波数ドメインのSI解析を行なうことも有効な解析手法です。

上記に関連し、2012年9月7日には、高速かつ高精度なSerDesシグナル・インテグリティ解析の実現のために、富士通セミコンダクター株式会社(以下富士通セミコンダクター)様がHyperLynxを採用されたというプレスリリースを発表しています。また同日開催されたTech Design Forum 2012においては、「HyperLynxを用いたUSB 3.0 IBIS-AMI Compliance Test Simulation Kit」と題した講演を富士通セミコンダクター様とメンター・グラフィックスで共同発表いたしました。

高速信号を扱うPCB設計においては、HyperLynxを有効に用い、品質の高い設計を可能な限り短期間で行うことができます。HyperLynxはPCB設計の各工程での用途に応じた製品展開を行っており、開発のあらゆる段階において設計者のニーズに柔軟に応えます。使いやすい解析ツールから完全に統合された設計/解析/検証機能まで、ユーザが直面している極めて重要な課題を解決します。

HyperLynxは、以下に掲載する6つの機能により、目的に応じてPCB基板上の信号解析を効率的に行います。

  • HyperLynx Analog: 回路図との連携でトランジスタレベル、ビヘビア(VHDL-AMS)レベルの対応が可能なアナログ回路設計をサポートします。
  • HyperLynx Thermal: 熱解析のツールで、部品発熱の解析のみならず、DCドロップと組み合わせた協調解析も可能です。
  • HyperLynx DRC: EMIチェックの機能を持ち、DRC命令をカスタマイズすることにより柔軟な解析が可能になります。
  • HyperLynx SI: 今回ご紹介したSI解析のツールです。
  • HyperLynx 3D EM: フルセットのフルウェーブ電磁界解析ソフトウエアで、アンテナ系の解析も可能です。
  • HyperLynx PI: DCドロップやデカップリング解析が行え、昨今の低電圧、大電流化に対応可能な製品です。

今回のNews & Views onlineものづくりでご紹介した高速信号を用いたPCB基板信号解析に関しては、技術文献「シグナル・インテグリティ解析の基礎」、および「高速制約付きPCB の設計:制約の作成」もぜひ併せて参考にご覧ください。

知らないでは済まされないシグナル・インテグリティ解析の基礎に関する資料はこちら

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