News and Views 2016 Winter / Vol. 16: ものづくり

ユーザ事例: ナミックス株式会社様
過渡熱解析装置T3Sterを活用した高熱伝導性Ag焼結ペーストの開発

ナミックス株式会社について

図1. 家電製品に使われている代表的なナミックス製品の例図1. 家電製品に使われている代表的なナミックス製品の例
図2. ナミックスの代表的なペースト、接着剤、絶縁材製品図2. ナミックスの代表的なペースト、接着剤、絶縁材製品

1947年設立され、新潟県に本社を構えるナミックス株式会社(以下ナミックス)は、エレクトロケミカル材料の研究/開発、製造、販売を事業内容としています。さまざまな電子製品に利用される(図1.)導電および絶縁TIM(サーマルインタフェースマテリアル)の世界有数のトップメーカーとして、半導体デバイス、受動部品、コンシューマエレクトロニクス、太陽電池などの製造業者に、アンダーフィル、封止剤、接着剤(図2.)を提供しています。米国、欧州、シンガポール、台湾、中国に子会社を展開し、年間売上高はおよそ250億円です。ナミックスは、エレクトロケミカル材料分野における「オンリーワン」「ナンバーワン」企業となることを基本方針に掲げており、最先端の研究活動と新素材の特許取得に積極的に取り組んでいます。

高密度実装に対するニーズの高まり

コンシューマエレクトロニクスや自動車の分野では、同じ面積内に今までよりも高密度で搭載できる電子部品に対する需要が高まっており、これを受けてプリント基板(PCB)に用いるTIMにもかつてないほどの高放熱性が求められています。このニーズを満たすために、ナミックスは2段階プロセスから成る独自のMO(金属有機化合物)技術を用いて低温焼結型のナノ銀(Ag)粒子接着ペーストを開発してきました(図3.)。このような銀と樹脂によるペーストは、金属化されたダイおよびサブストレートと強力に接着する特性を持つとともに、高い熱伝導率と低電気抵抗率を備えており、PCBに塗布した場合には熱機械的信頼性の向上につながります。製造者の立場から見ると、ペーストの使用時に焼結温度を可能な限り低く抑えれば、電子部品を損傷から守ることができます。しかし反面、ペーストの焼結温度を高くすることで、より高品質な焼結接合部分を作成したいという要望もあります(図4.)。

焼結とは、焼結体と呼ばれる高密度の物体が、原材料となる固体粉末の集合体(ここではアミン樹脂)の融点よりも低い温度に加熱された時に硬化する現象のことです(図5.)。アミン樹脂でコーティングされたナノAg粒子ペーストは室温で良好な分散安定性を示しますが、アミン樹脂の成分は低温の硬化炉で加熱されると分解します。結果として生じる多孔質の焼結構造体はナノAg粒子を樹脂システムで補強したものとなり、Agペーストの85重量%という高い熱伝達率以下に低下することはありません。

図3. MO還元反応技術を使ったナミックスの2段階の焼結プロセスによるナノAg粒子の生成模式図図3. MO還元反応技術を使ったナミックスの2段階の焼結プロセスによるナノAg粒子の生成模式図

図4. MO技術によって生成されたナノAg粒子の品質と硬化温度図4. MO技術によって生成されたナノAg粒子の品質と硬化温度

図5. 低温ナノAg粒子ペーストの焼結メカニズム図5. 低温ナノAg粒子ペーストの焼結メカニズム

このようなペースト/硬化プロセスの典型的な利用例として、図6.のダイアタッチと金属サブストレートを見てみましょう。ナミックスのAgペースト接着剤とダイの典型的な接合部分の詳細を、X線撮影によってとらえた断面画像が示されており、ナノAg粒子がサブストレートの接合面およびチップの背面と接合しているのが分かります。良好な接着は貫通ボイドを含みません。

業界他社の追随を許さない測定精度に着目し、ナミックスはT3Ster®過渡熱解析装置を導入して新規開発したナノAg粒子ペーストの熱信頼性の妥当性を確認しました。図7.に示すように、銅のヒートシンクボード上でAgペーストによって接着したダイのテストを実行し、実験では、電源を入れてからスイッチを切り、検証する試験片内のペーストの熱伝導率を測定するためにT3Sterの構造関数を用いました。

図6. ダイとナノAg粒子ペーストの接合構造の模式図と、加熱硬化後の断面画像図6. ダイとナノAg粒子ペーストの接合構造の模式図と、加熱硬化後の断面画像

図7. ナノAg粒子ペーストの熱抵抗を測定する試験片をカスタムプローブアセンブリに装着する索具、T3Ster、ブースター、サーモスタット索具と模式図図7. ナノAg粒子ペーストの熱抵抗を測定する試験片をカスタムプローブアセンブリに装着する索具、T3Ster、ブースター、サーモスタット索具と模式図

ナミックスでは、最高品質のペーストを決定するために、この実験装置を使って幅広い種類のナノAg粒子ペーストとともに、さまざまなペースト配合および硬化条件を検証しました。T3Sterの構造関数グラフからは、多種多様なダイアタッチの利用条件に基づいた豊富な熱伝導性データを取得できました。例えば、図8.は同じテスト条件下で3種類のペーストの構造関数を測定した結果を示しており、熱流路に関して広範囲にわたる診断情報を提供しています。

校正手順の一環として幅広い種類のペーストを使って実行されたテストにおいて、プローブを試験片に当てる位置を変えても構造関数に定量的な変化がないことが分かりました。また同様に、プローブ先端の太さとプローブを試験片に押し付ける強さを変えても、T3Sterの測定結果にほとんど変化がないことが判明しました。これで、T3Sterに基づくテスト手法による熱信頼性の妥当性確認が取れました。最後に、ナミックスの樹脂強化した独自のシステムを使用したAgペーストと、使用しないAgペーストの2種類を使って合計1,000サイクルまでの温度サイクル試験を実施することによって、異なったサイクルにわたって接着材料の熱抵抗ならびにダイアタッチの接合強度がどのように変化するかを測定しました(図9.)。ナミックスの樹脂強化したAgペーストは、物理特性における安定性が明らかに高く、信頼性も高いことが判明しました。これは、図9.に示す250サイクルおよび1,000サイクルを経た試験片のC-SAM(Cモード超音波走査型顕微鏡)画像によって確認したものです。ナミックスのナノAg粒子ペースト技術は、独自の高度な熱機械特性を活かして、今後多岐にわたる電気機器やPCB用途などへの普及が見込まれています(参考文献1)。

図8. 3種類の銀粒子ペーストダイアタッチから得られた典型的なT3Ster構造関数グラフ図8. 3種類の銀粒子ペーストダイアタッチから得られた典型的なT3Ster構造関数グラフ

図9. Agペーストダイアタッチ試験片の温度サイクル試験結果: ナミックスが開発したMO技術による樹脂強化システムを使用した場合と使用しなかった場合の比較図9. Agペーストダイアタッチ試験片の温度サイクル試験結果: ナミックスが開発したMO技術による樹脂強化システムを使用した場合と使用しなかった場合の比較

参考文献

  • “Development of Low temperature Sintered Nano Silver Pastes using MO Technology and Resin Reinforcing Technology” by K. Sasaki & N. Mizumura, Electronic Components & Technology Conference, IEEE 978-1-4799-0232-3/13, Las Vegas, USA, 2013