Technology Reports 2006

Crossing the Chasm: プロセス変動を設計フローで考慮する

はじめに

今日のジオメトリの微細化、インターコネクトの細線化、センシティブな製造プロセスなどから、ウエハから許容できる歩留まりを短期間で確保することはますます難しくなっています。さらにナノメータ設計では、設計者が意図したイメージ通り確実にプリントすることは難しく、RET(解像度向上テクノロジ:Resolution Enhancement Technologies)の適用抜きの製造は考えられません。

従来、デザイン後のプリント性を保証するのはファウンドリの責任であり、これはOPCのようなRET用ポストレイアウト・アプリケーションで対処されてきました。しかし、マスクを微調整するだけではもはや不十分です。その為、ファブレスやファウンドリでは、ナノメータによる影響の解析と管理を行うDFM(Design For Manufacturing)ソリューションを用いた歩留まり向上の手法を模索しています。

プロセス変動の問題

設計と製造双方が懸念する1つに、プロセス・ウィンドウにおける変動制御方法が挙げられます。つまりプロセス・ウィンドウに着目し、マスクプリントを行う際のエネルギー・ドーズとフォーカスの影響を予測する必要があります。

実際にはリソグラフィック・ウィンドウが静的なものではなく、隣接する図形の組み合わせで大きく変化するため、ナノメータ設計では、プロセス条件をモデル化した従来のDRCベースの手法によるプロセス・ウィンドウの変動への対応や、その制御を行うことはできません。

昨今のように、130nmや90nmのプロセスにおいて設計者が歩留まり向上のためファウンドリ推奨ルールを活用している場合は、特定のデザイン、プロセスにおける製造に関する詳細な情報を含むファウンドリ・データを利用するDFM手法の提供が必要です。この機能が、LFD(Litho-Friendly Design)として知られる、先端DFM技術の重要な役割です。

Litho-Friendly Design のコンセプト

図1:LFDツールはPV(Process Variation)バンドを使用し、ピンチング、ブリッジング、エリア・オーバーラップ、およびC D変動を含む、一般的な構成における欠陥を予測します。 (クリッ図1:LFDツールはPV(Process Variation)バンドを使用し、ピンチング、ブリッジング、エリア・オーバーラップ、およびC D変動を含む、一般的な構成における欠陥を予測します。 (クリッ

変動性に対する設計に積極的に取り組むには、プロセス・ウィンドウ下での製造の現象のシミュレーションを可能にする基盤整備が必須です。LFDは設計者がプロセス・ウィンドウの各種の影響に対する情報を捉えることにより、設計段階でそのチップ製造の問題をコントロールすることで製造プロセスの変動の影響を受けにくいデザインを作成し、歩留まりの向上を可能にします。

LFDチェックは以下の3つの重要なタスクを実行します:

  • 最適な条件下だけでなく、考え得るドーズ/フォーカス条件下でデザインがどのようにプリントされるかデータを収集
  • 特定の欠陥、または歩留まり阻害条件を予測
  • 設計の各部分に対し特定のプロセス・ウィンドウ下で良好に製造できるかの指標をスコアとして提示

レイアウトのデータおよび製造の変動に対して予測される結果は、PV(Process Variation)バンドを使った高度なテクニックを使って収集されます。(図1)。PVバンドを作成するには、中間層であるpost-RET層を作成する必要があります。この層に対してシミュレーションが行われ、シリコンの印刷イメージが作成されます。

PVバンドは、最も一般的な構成であるピンチング、ブリッジング、エリア・オーバーラップ、CD変動を含む複数の構成について歩留まり欠陥を予測し、 LFDルールにコンパイルします。これらのLFDルールは、設計者が設計過程において危険な領域を解析するために用いるものです。LFDの欠陥ルールは、プロセス変動によるプリントの変化が製造、タイミング、電力の見地から重大なエラーにつながる可能性のある領域を判定するものです。

製造とのギャップを埋める

DFMでは、製造チームが使用しているツールと矛盾しないツールを活用することが賢明であり、これにより各種の情報を正確かつシームレスにレイアウト設計者にフィードバックすることが可能となります。

特にLFDは、製造者が実績のあるRETのレシピ、プロセス・ウィンドウ範囲内でプロセス・モデルのモデル化、それらを特定のデザイン変動シミュレーションに活用することで効果が得られます。洗練され高い精度で調整され、標準的な条件下の製造実績のプロセス・モデル、各プロセス・ウィンドウにおいても同様に動作することが重要です。製造で使用されないRETツールでは、標準的な条件下でも正確な結果を得られることはほとんどなく、異なるプロセス・ウィンドウではなおさらです。130nmのプロセスでは簡単な光学モデル、90nm以降のプロセスでは調整された光学、レジスト、およびエッチングモデルの使用が必須となります。

エネルギーやドーズ条件、RET設定、プロセス・モデル、チェック対象となるパラメータ可能なモデルを含む「LFDキット」は、一連のタスクをASCIIフォーマットで記述したわかりやすいチェック結果データベースとして提供可能です。さらに、ファウンドリ(特にファウンドリ-ファブレスのビジネス・モデルの場合)はIP(Intellectual Property)の流出を恐れ、データの公開をためらっていましたが、そのフローの中ではファウンドリの製造設定に関するIP保護のためのコンパイルと暗号化が可能です。

設計フローに対するLFDの採用

図2:Design Variability Index(DVI)は、プロセス変動に対してより影響が少ない設計を作成するためにはどのレイアウト構成がベストかを決定するためのデータを提供します。図2:Design Variability Index(DVI)は、プロセス変動に対してより影響が少ない設計を作成するためにはどのレイアウト構成がベストかを決定するためのデータを提供します。

設計者はLFDキットを使ってシミュレーションを行い、特定のリソグラフィック・プロセス・ウィンドウにおいてレイアウトがどのように描画されるかを検証できます。シミュレーション結果には、レイアウト・ビューア/エディタ、メンターのCalibre RVEまたはCalibre DESIGNrevのような結果表示環境を使ってチェック結果や変動データベースを確認できます。設計者は従来の設計環境を使い、同じ要領でレイアウト変更を行うことができます。つまりLFDは設計フローに簡単にプラグインして利用する事が可能です。

図3:LFDのイタレーション・ループは、スタンダード・セル、カスタム、アナログ等のあらゆる設計フローに容易に適用可能です。図3:LFDのイタレーション・ループは、スタンダード・セル、カスタム、アナログ等のあらゆる設計フローに容易に適用可能です。

先進的なLFD製品では、レイアウト設計者がそれに基づいてトレードオフを行うための指標も提供しなければなりません。このDVI(Design Variability Index)は、設計の変動性を捉えることにより、プロセス変動に対してより影響が少ない設計を作成しようとするもので、値を小さくすることを目標とします。LFD設計フローでは、その異なる変更レイアウトをこの指標を使って比較し、DVIの最も低い設計を採用します(図2)。

OPCを含め、ファウンドリで行うパターン転写プロセスに関する詳細は設計者ではなくLFDキットが認識します。設計者にプロセスの影響のみ示されます。シミュレーション情報は、現在のDRCルールと類似した形態で設計者に提示され、設計環境内で結果データのクラス分けや並べ替えが可能です。このデータには可能なソリューションのコメントも含まれます。

設計者がLFDモードでの作業に慣れるに従い、どのような設計の構成が製造プロセスに好影響をもたらすかを理解していくでしょう。そして次第に、ユーザーはトラブルを回避する設計、つまり製造プロセスを意識した設計を自然に行えるようになります。「DRCクリーン」なデザインを完成するという目標は、「DRCおよびLFDクリーン」なデザインを完成するという目標に変わっていくのです。そしてファウンドリ側では、歩留まり管理担当者はOPCの諸問題を最小限にとどめることができ、マスクの製造も行いやすくなります。また、歩留まりを考慮した設計を繰り返し、かつ対話形式で実施可能なため、スタンダード・セル、カスタム、あるいはチップといった種別に関わらず、あらゆる既存の設計フローに容易に適合します(図3)。

 プロセスの変動は避けられませんが、そこからの影響はモデル化が可能であり、最小限に抑えることが可能です。しかし、プロセスの変動を捉え、製造時により影響され難い設計を行うことはDFMにおいて新しく大きなステップです。スタンダード・セルとIPのプロバイダにとって、設計フローにLFDを取り入れることは、歩留まりの影響が問題となることを防ぎ、全体的な歩留まり結果の改善に貢献するための方法です。LFDクリーンな設計というゴールに向けて、今日開発されている様々な技術により、新しいプロセス・ノードでの歩留まり阻害要因の影響を管理するための基盤が形成されつつあります。これまでは、歩留まり制御の大部分は製造側に任せてきましたが、LFDフローにより、設計者も歩留まりの低下防止と、より高い歩留まりを得るための改善に貢献できるのです。